・アレニル
・甘えるアレルヤ



シュミレーションや機体のメンテナンスなどの合間、空いた時間は一人で部屋にこもって本を読んでいることがほとんどだ。誰かと一緒にいて言葉を交わすことは嫌いじゃなく、むしろ好きな方だとは自覚はしているけれども。でもやっぱり一人で過ごす時間は心地良い。リラックス出来る。
そんなワケで、今日もまた空いた時間を部屋にこもってベッドの上に上がりこみ連なる文字に視線を落とす。これは先日地上に降りた際に買ったペーパーブックで、内容はなかなかの俺好み。面白れぇ。
出来れば時間にも誰にも邪魔をされずに一気に読んでしまいたい、と思えるくらい俺は夢中になって読んでいた。

それなのに。
さっきから俺のささやかな至福の時間を邪魔してくれるヤツがいる。

「ロックオンー。」
俺と同じようにベッドの上に上がりこみ、背中合わせで座りながら何をするでもなく時折俺の名前を呼ぶだけで。
「んー?」
と手元から視線を動かさずに返事を返しても、結局その後の言葉は続かない。ただ何かを訴えるように数回、背中合わせの身体を揺すってくるだけ。おい、俺まで身体が揺れて読めねぇじゃねぇか。
そしてまた静寂。さっきからこれの繰り返しだ。ったく、何がしたいんだ、おまえは。
アレルヤの奇怪な行動は不思議に思うけど、それよりも俺は目の前のペーパーブックの続きが気になって敢えて放っておいたら―――

「おわっ!」
ペーパーブックを見ていたはずの視点がいきなり天井に向かっていた。
背中に有った筈のアレルヤの温もりは消え、代わりにシーツのさらりとした感触。そして俺の顔と天井の間にぬっと現れた、ちょっと不貞腐れたアレルヤの顔。
・・・・・・・・なに拗ねた顔してんだよ。
あまりこういった表情をしないアレルヤの今の顔が珍しくて思わずマジマジと見ていると、アレルヤは不意に視線を逸らして、
「・・・・・・・・・・ペーパーブックじゃなく、僕に構って下さい。」
と拗ねたように、でも少し照れくさそうに言うアレルヤに思わず吹き出した。
なぁーんだ、あれは構って欲しいっていうサインだったのかよ。まったく、素直に言えっての。
でもそんなアレルヤが無性に可愛らしくて、続きは気になったけれど読みかけのペーパーブックを放り出して、今はこの可愛い年下の我侭に付き合ってやることにした。
俺も大概甘いのかねぇ。





2008.12.01〜2009.01.31 Clap