・アレニル
・1期ベース



地上でのミッションを控え降り立った無人島。
ミッションプランの確認と機体の整備を終えたら後は僅かな休息時間。
今回は珍しくデュナメスとキュリオスの共同作戦だ。
もちろん、ロックオンもこの無人島で機体と共に待機状態のはず。
彼より一足送遅れて到着した僕は、キュリオスの整備状況を軽く確認した後、先に訪れているはずのロックオンの姿を探して自然溢れる島内を歩き回っていた。


先程デュナメスのコンテナを覗いてみたけれど、整備は既に終わっているようだった。
そしていつもなら一緒に居るはずのハロは、デュナメスの指定席で微調整などの最終チェックをしていた。
ならば彼はどこに?
コンテナ周辺を探してみたけれどその姿は見つからず、仕方なしに僕は緑生い茂る森林へと足を踏み入れることにした。

特にこれといって用事があるわけでもない。
ただ僕が彼に会いたいだけ。
何やってんだか・・・と思わず自嘲めいた笑みが零れるが、でも近くに居るならば顔を見たいと思う。
それは好きな人なら当たり前のことだ。
早く、ロックオンに会いたい。


そうして森の中を暫く彷徨えば、一本の大きな木の陰に長い足が伸びているのを見つけた。
知らず知らずの内に頬が緩むのがわかる。
人の手が入ってないことを知らしめるように足元を覆う草々を踏みしめてロックオンの元へと僕は一歩一歩近付いていった。
どんな顔をして迎えてくれるだろうか。
そんなささやかな楽しみを心に秘めながら。
「・・・ロックオン?」
背後まで近付いてそっと声を掛けてみる。
この距離まで近付けば、いつもなら気が付くはずなのに、今日はそんな気配もない。
「・・・ロックオン?」
不審に思ってもう一度名前を呼んで、そっと顔を覗きこんでみたら・・・。
「・・・・・・・・・」
思わずくすりと笑みが零れた。

やっと見つけたロックオンは、大木に凭れかかるようにして寝息を立てていた。
趣味でもある読書をしていてつい居眠ってしまったのだろう、片手には紙媒体の文庫本を持ったままだ。
僕は緩んだ頬を更に緩ませて、ロックオンの片手に捉れたままの本をそっと手にとってマーカーを挟んでおく。
後で彼が困らないように。


すうすうと気持ち良さそうに眠っているロックオンを起こそうなんて気はこれっぽっちもない。
特に用事なんてないんだから
それにミッションだけじゃなく、普段から僕たちのことを気に掛けてくれている彼は、一人になれるこんな時くらいしかゆっくりできないのだろう。
そう思うと心がつきりと痛む。
いつも僕たちが迷惑を掛けているから、とか、僕ではまだ彼の頼りにならないのか、とか・・・。


ロックオンの隣に腰を降ろして空を見上げてみる。
鬱蒼とした木々は瑞々しく青々としていて、何だか心が洗われるようだ。
吸い込む空気もどこか澄んでいる。
それから木々の隙間から零れ落ちる太陽の光が柔らかくて心地良い。
ああ、これならロックオンがつい眠ってしまったのもわかる気がする。

そうして僕も目を瞑り、隣で眠る彼の寝息のリズムに僕の呼吸も合わせてみた。


 ◇◆◇


ふと人の気配を感じて目が覚めた。
どうやら俺は眠っていたらしい。
俯いていた所為で首の後ろが痛むのを、左右に動かして緩和させればコキコキと関節が音を立てた。

そういえば、と隣に人の温かみを感じて伺えば、いつの間に来ていたのかアレルヤが居て、同じように俯いて寝息を立てている。
俺を探しに来たのか。
ならば起こせばいいものを、と思わず苦笑いが零れた、
だがきっと、俺を気遣って起こさなかったのだろう。アレルヤらしい。
読んでいたはずの本は、ちゃんとマーカーを挟まれて脇に置かれている。
そんな気遣いにもくすりと笑みが零れた。

さて、アレルヤを起こして戻るべきか。あまり機体から離れているのも良くない。
こんな所で居眠りしていることを菫色の髪をしたマイスターに知れたら、間違いなくどやされるだろう。
でも。
このままアレルヤと二人でいる空間を失うのが勿体無い気もして。
あと少し・・・あと少しだけ、と心の中で謝罪を呟いて、ことりとアレルヤの肩に頭を預け俺はもう一度目を瞑った。






2009.04.01〜2009.05.31 Clap