・アレニル



―――伸びている

ロックオンの今の姿はまさにその形容詞がぴったりだ。
ソファにその長身を気怠そうに横たわらせ白い腕はだらりと床に垂れ下がり、うつ伏せたその顔は柔らかいクッションに埋もれていて、亜麻色の柔らかい髪までどこか無気力そうに跳ねている。
「・・・・・あつい・・・」
くぐもった声で発されたその言葉は、今日一体何回目のものなのか。数え始めてからはもう既に20回を優に超えている。
「・・・あー・・・あつい」
というか、もう1分に1回の割合で言ってない?その言葉。
「あー・・・もうっ!あついったらあつい!」
「そりゃ今は夏ですから」
半ば逆ギレのように叫んだロックオンに僕はさらりと冷静に言葉を返した。手元の文庫本のページをぱらりと捲る。
その白い肌から推測するにロックオンはきっと北欧系の人種で、育ったところもそうだとすればきっと暑さに弱いのだろうということは理解できる。
だけど、そんなに暑い暑いを言い繰り返せば余計に暑くなるんじゃないかな?暑さに強い僕が言うのもなんだけど。
「・・・あー・・・なんでアレルヤはそんな平気な顔してんだよ」
今度の矛先は僕ですか。
「僕は暑さには強いですから」
「・・・って、前は寒さに強いって言ってなかったか!?」
「ええ、寒さにも強いですね。丈夫に出来てますから」
視線を本に落としたまま僕は事も無げにそう答えれば、ロックオンはうぅーと意味不明な呻き声を上げた。
超兵として作られたこの身体はどうやら寒暖の影響をあまり受けないらしい。暑い寒いはちゃんと感じるものの、だからといってどうってことはない。
どうやらそれがロックオンにはご不満のようで。
クッションを抱え込むようにして顔だけをこちらに向けているロックオンは膨れっ面。でもそんな表情も可愛いよね。
「・・・・・おまえが弱いもんはねぇのかよ・・・」
まるで拗ねた子供のようにぷぅっと膨れたまま訊ねてくるその問いに、僕は手元から視線を上げてにこりと微笑んでこう答える。
「僕?決まってるじゃないですか。僕が弱いのはロックオ・・・」
「あほかっ!」
せっかくの愛の告白を投げ付けられたクッションに阻まれてしまった。
ひどいなぁ、もう。





2009.06.01〜2009.10.30 Clap