・アレ→ロク(ニール)
・4年後捏造・妄想
・ニール生存



もう、どれくらいこうされているのかわからない。
暗闇の部屋の中、縛り付けられ、手足も満足に動かせず、ただ僅かに動くのは首と眼球だけ。
時折、軍人(だと思われる)がやってきて、相変わらず同じ詰問を繰り返し訊ね、そして情け程度の食物を無理矢理僕の口の中に放り込んでいく。まるで死なれたら困る、というように。この口に嵌められた拘束具だって、舌を噛み切って死なれたら困るという意味合いのものだろう。
どれだけ繰り返し繰り返し、同じことを聞かれたって答えることなんてしないのに。そんな中途半端な覚悟であの組織に参加した訳ではないのだから。たとえ暴力的な行為をされたって、僕は絶対に口を割ったりしない。痛みには慣れている。
だから、無意味な行動を繰り返すなぁ、なんて時間をを忘れた僕の頭はそんなことをぼんやりと思った。


生きることをあきらめたわけじゃない。だって、それはあの日ハレルヤと交わした約束だから。
だからといって、誰かが助けに来てくれるなんて虫のいいことを考えてるわけでもない。

だったら、僕はどうしたいのか―――

そんなことを繰り返し繰り返し考え、そして答えの出ないまま考えることを放棄する。もう、そんなことを思うことすら面倒臭くなってきた。
だって、もうどれだけこの空間にいるのかもわからないのだから。


でも、これだけはどれだけの時間が経っても、何度同じことを思っても、変わらない願い。

どうか、あの人だけは無事でありますように―――

あの強くて優しい、けれども脆い彼の無事だけは願い続ける。願い続けさせて。
彼は今どうしているのだろう。無事に組織に保護されてるといいんだけど。まさか僕と同じように拉致されてるなんてことはないだろうか。
そんな不安が過ぎる。
苦しい思いはしていない?辛い思いもしていない?淋しい思いをしていない?
この現状に苦痛を覚えることはないけれど、貴方を守れないことが、側に居られないことが何よりも辛い。
側に居られないならせめて、この想いだけでも貴方に届きますように。


そんなことを願いながら、今日も開くことはないであろう、この部屋でたった一つの扉を見ていたら。
急に眩しい光が差し込んで、聞き覚えのある、そして何よりも愛しいその人の声が僕の耳に届いた。

『アレルヤ!』





2008.08