・#9ネタ
・ライルの心情を勝手妄想



何とか大気圏も突破して敵部隊も退けた後、ケルディムを降りて自室へと向かう。
まだ予断は許さないだろうが、何しろトランザムという機能を使って粒子残量が著しく低下してしまった機体では大したことはできないからいいだろう。
途中、連れ忘れていたハロが通路でふわふわと浮いていたので両手で捕まえる。
「悪かったな、置き去りにして。」
そう言えばハロは何かを言うわけでもなく、ただその赤いLEDを数度点滅させた。

部屋に入ってハロをベッドの上に放り投げると、アン、と小さく声を上げただけで隅で大人しくしている。その様子を目の端で捉えながら、俺は窮屈なパイロットスーツを脱ぎ去り指定の制服に袖を通した。
本当、よく出来たやつだと思う。
何でもない時は動いたり跳ねたり喋ったりと騒がしいやつだけど、こっちが何かしら思うことがある時はただそこにいるだけ。何も言わないでもわかってくれる。そんじょそこらの人間より気が付くやつだ。

着替え終わると、ごろりとベッドの上に横になる。脳裏に浮かぶのはさっきの会話。兄さんのこと。
さっきは何とか冷静を保っていたけれど、一人きりになれば様々な感情が渦巻いてくる。
「・・・・・あのガンダムが兄さんの敵・・・・」
いや、父さん母さん、エイミーの敵でもある。口にした途端、心の中で一層どす黒い感情が渦巻く。きっと兄さんも知った時はこんな気持ちだったんだろうか。

『尊敬してる』

その言葉に嘘偽りはない。子供の頃から何でも出来てみんなに慕われる兄さんをずっと尊敬していたし、自慢の兄さんだった。離れ離れになってからも連絡こそくれないにしても、俺をカレッジにまでやってくれたし資金面で色々と支えてくれた。そんな自慢の兄さんに誇れるよう、俺も自慢の弟になろうと頑張ったんだ。
(でもまさか、こんなことになろうとは思ってもいなかったけどな。兄さんも。俺も。)

きっと兄さんは自分の敵討ちなんて望んじゃいないだろう。だからこそ『未来のために戦う』なんて言葉を口にしたんだ。俺自身に言い聞かせる為に。兄さんを慕う、あいつらの為にも。
でも勝手な話だよな。自分は父さんや母さん、エイミーの敵を討つ為に戦って勝手にいったくせに、自分はそんなことを望まないなんてさ。
全てを知ってしまった俺のこの感情をどうしたらいいんだ?教えてくれよ、兄さん。

「・・・・・ほんと、勝手な人だよな。なぁ、ハロ?」
そんな俺のごちた言葉にもハロはLEDを数度点滅させるだけだった。





2008.12