・ディランディと大学生ハプティズムパロ
・相合傘シリーズ アレルヤver.
「・・・あ、」
構内の玄関から足を一歩踏み出したところで、目の前の景色に僕は思わず立ち止まって声が零れた。気付かぬ内に降り出した雨は、さぁさぁと静かに音を立てて木々を大地を濡らしている。肌に触れる空気はしっとりと湿気を含んでいた。
その湿気を蹴散らすかのように僕は溜息を零す。
今朝見た天気予報では降り出すのは夜半過ぎだと言っていたのに、随分と早い夜半過ぎだとその予報を伝えた気象予報士に思わず文句を言いたくなった。そしてその言葉を真に受けた自分が恨めしい。
だから雨具の用意などしてきてはいなかった。そして気になるのは屋外に干してきた洗濯物。選択している講義の関係で僕より早く帰ってるはずのハレルヤは気付いて取り込んでいてくれるだろうか。気になるからメールをしてみよう。
それから文句は言われるだろうけど、傘を持って迎えに来てくれないか聞いてみようと鞄から携帯を取り出した時、聞き慣れたクラクションが雨の中に響いた。
門の外にはよく知っているシルバーの車。まさか。どうして。
「ロックオン!?」
濡れることも厭わずに駆け出して近寄ってみれば、それは間違いなく彼の車で。その愛しい彼は車内から手を振って、『早く乗れ』と手で合図を送っていた。
その言葉に甘えるように、僕はドアを開け素早く身を滑り込ませる。まさか迎えに来てくれるなんて。すごく驚いたけれど、でもそれ以上に嬉しかった。
「お疲れさん」
そう言って笑ってくれるロックオンの顔は、いつ見ても綺麗だし可愛いと思う。
すいません、ありがとうと慌てて伝えれば、『気にすんな』とまた笑ってくれた。
鞄や身体に付いた雨滴を拭っていれば、車は静かに走り出す。彼の運転は車の外見に似合わず随分と丁寧だ。シフトチェンジをするその白くて長い指の動作が流れるように綺麗で、僕は思わず見惚れてしまっていた。
「・・・そういえば、どうして迎えに来てくれたんですか?」
しばらく走ったあと、随分失礼だとは思ったけど訊ねてみた。だって、今ロックオンは・・・
「んー?ああ、外見たら雨が降っててさぁ・・・アレルヤちゃんと傘持ってったかなぁと思って」
まぁ確かに今日は持っていなかったけど。でもあまりにも偶然過ぎる。というか・・・
「ついでだからこのままどっか行くか?雨の日のドライヴも乙だよなぁ」
ああやっぱり。ロックオンの陽気すぎる言葉に事の次第が見えた気がした。
「・・・ロックオン、また逃げました?」
「う゛、」
その顕著すぎる反応に、僕は呆れて溜息を零す。どうせそんなことだろうと思ったんだ。
「・・・もう、今日だけですよ?」
やっぱり僕はこの年上の恋人に随分甘いようだ。
2009.06.01〜2009.07.31 Clap