・ディランディと大学生ハプティズムパロ
・相合傘シリーズ ライルver.



「・・・・・」
改札を出た瞬間、目の前に広がった光景に思わず嘆息が零れた。
やられた。それが正直なところの感想だ。一縷の望みを賭けてはいたが文字通り、やはり天は俺に味方をしてくれなかったってところか。
会社を出た辺りから空は不穏な色を宿していて、何とか家に辿り着くまでは保ってくれよと足早に帰路を急いだが、それでも願い虚しく、残念ながら駅を出てみれば街は雨のカーテンを纏っていた。

もう一度重い嘆息を零す。
今朝、傘を持って出ることはしなかった。ついでに言うと折りたたみは会社のデスクの中。つまり今の俺は雨具をひとつも持ってないってことだ。舌打ちひとつでもしたい気分だ。
それでも、そんなことをしたって今の状況が何一つ変わるわけがない。
(仕方がないから兄さんに迎えに来てもらおう)
そう思って携帯を取り出したところで、不機嫌な声に呼び止められた。

「ハレルヤが迎えに来てくれるなんて嬉しいよ」
超絶機嫌の悪そうなハレルヤに向かって感謝の意を述べれば、舌打ちと共に返事が返ってくる。
「・・・ロックオンが迎えに行けって。自分とアレルヤは夕飯の支度で手が放せねぇからって」
苦々しそうにそう呟くハレルヤに俺は心の中でガッツポーズをした。兄さん、グッジョブ!
「でもありがとうな」
「・・・ちっ」
態度はふてぶてしいけど、それでも照れていることが伝わってくる。素直じゃないよなぁ。でもそんなところが、こいつの可愛いところなんだけど。
「・・・おら」
押し付けるように突き出された傘を受け取れば、ハレルヤはさっさと踵を返して歩き出していく。そんな姿に思わずくすりと笑みを零して、俺は受け取った傘を閉じたままハレルヤの後姿を追った。


「なっ!?てめぇ、なんで傘差さねぇんだよ!」
「せっかくなんだから相合傘して帰ろうぜ?」
「っ、てめぇいっぺん死ね!」
ハレルヤが迎えに来てくれることなんて滅多にないんだから、こういう機会みすみす逃す手はねぇだろ?





2009.06.01〜2009.07.31 Clap