・ディランディとちびハプティズムパロ
・冬といえば・・・
足元から寒さが這い上がってくるような冷え込む冬の夜。
そういや寒冷前線が近付いてきてるってTVでお天気お姉さんが言ってたなぁ、と風呂上りのおちびたちにパジャマを着せながらぼんやりと思った。
部屋の中は暖房器具で暖めているはずなのに、爪先はどこか冷えている感じがする。この調子だと雪が降るか?そうなれば明日はおちびたちにもう少し厚めの服を着せてやらないと・・・なんて思いながらアレルヤに仕上げの腹巻を着せてやっていれば。
「あ、ゆきだ!」
と先に着せ終えたハレルヤが窓の外をチラつく白いものを見つけて声を上げた。あぁ、ほんとに降り出しちまったか。
「うわぁ、ほんとだー!」
ハレルヤの声に釣られてアレルヤもまた窓に駆け寄って空からふわふわと舞い落ちる雪を目で追っている。その足元でハロまでもが『ユキ!ユキ!』と叫んで跳ね出した。
はぁ、なんで子供ってのは雪が降るとテンションが上がるかねぇ。って、俺も子供の頃はそうだったか。
「ねぇねえ、ろっくおん。あしたはゆきだるまつくれる?」
「ゆきがっせんできる?」
期待に目をキラキラとさせながら尋ねてくる二人に、積もったらな、と答えてやれば、
「つもってねー。」
「つもってくれー。」
と、窓にへばりついて外に舞う雪に一生懸命祈ってるアレルヤとハレルヤの姿が妙に可愛らしくて思わず和んでしまった。
それなのに、そんな雰囲気をぶち壊すように玄関の扉が開くと同時にドタバタと一気に騒がしくなる。まったくあいつは・・・。
「ただいまー。っかー、さみぃー!雪降ってくるなんて信じらんねー!」
いや今冬だから。雪が降ってもおかしくない季節だから。
「おかえり、ライル。俺たち今風呂入ったとこだからまだ暖かいだろうし、先に入って来い。」
寒さで頬と耳を真っ赤にして部屋に入ってきたライルに風呂を勧めれば、おー、と返事なのか何なのかわからない言葉を残してすぐに部屋を出て行った。
その後ライルの部屋の扉が開く音がしてすぐに風呂場の方の扉が開く音が続いたから、多分入るんだろうな。
「ライルー!ちゃんと肩まで浸かって100数えるんだぞー!」
「俺とちびたちを一緒にすんな!」
冗談めかして叫んでやれば、風呂場の所為か若干反響した声で返事が返ってきた。いやだって、手が掛かるのはおまえもおちびたちも一緒じゃねぇか。
「さぁて。アレルヤ、ハレルヤ、もう寝るぞー。」
窓際に張り付いて飽きもせずに雪の降る様を見続けている二人に声を掛ければ、えぇー、と明らかに不満気味の二人の声。
「寝坊して保育園に遅れたら雪合戦も雪だるまも出来ないぞ?」
「うー・・・」
「ちぇー・・・」
仕方ないと渋々あきらめた二人はベッドに入っても寝付くまで、積もる?積もるかな?とずっと繰り返し訊ねてきた。あぁほんと楽しみで仕方ねぇんだなぁ。
やっと寝付いたおちびたちに部屋の明かりを消してやれば、暗闇の中にちらちらと舞う雪の姿が一層はっきりと浮かび上がる。
せっかくこんなに楽しみにしてるんだから、どうか積もってくれますように。
小さな白い結晶にそう願いながら、俺はおちびたちの部屋を後にした。
2008.12