・アレニル
・1期ベースだけど時間軸大無視(笑)
僕が二十歳を迎えてから度々ロックオンと一緒にお酒を飲むようになった。時間があれば何をするでもなく一緒に過ごす関係だけれども、でもお酒を飲むことが一緒に居る理由の一つになる為僕としても嬉しい限りだ。
それに、マイスターの中でもロックオンの飲酒に付き合えるのが年齢的にも唯一僕だけ、ということがほんの少し僕に優越感を齎していた。
今夜も夕食後、ロックオンが瓶を片手に僕の部屋へとやって来て二人だけの飲み会が始まった。
スメラギさんと初めて飲んだお酒は苦くてどうしてこんなものを・・・と思ったけれど、ロックオンと度々飲むようになって、正直まだ美味しいとは思えないけれども最初の時よりは抵抗感はなくなってきた。
それはロックオンと一緒に飲むから、なのかもしれないけれど。
それからロックオンと飲むようになってわかったことがひとつ。どうやら僕はアルコールに弱くはないようだ。そりゃあ多めに飲んだ時は酩酊感を覚える時はあるけれども、ロックオンに付き合える程度は飲めるということもわかった。
だからロックオンもこうして誘ってくれるんだと思う。
用意したグラスに氷を2つ3つ入れて琥珀色の液体を注げば、カランと氷が音を立ててグラスの中でバランスを崩した。
「お疲れ。」
「お疲れさまです。」
そんな他愛もない言葉を交わしてグラスを重ね、お互い琥珀色の液体を一口口に含んだ。喉を焼くような熱さが通り過ぎていく。
ホッと一息吐けば目が合って、お互い思わずくすりと笑い合う。こんな何でもない瞬間でも心地好く感じるのは、やっぱり彼のことを心底好きなんだなぁと思う。
稀代のテロリストである僕たちがこんな心安らぐ瞬間があっていいのだろうか、と時々不安になるけれど、それでもロックオンを好きな気持ちは止められないのだから仕方ないし許されたい。
今日もそんな時間を、また他愛もない会話をしながら過ごしていく。
ロックオンも特にアルコールに弱いというわけではないけれど、でも人種的な特徴なのだろうその白い肌は杯を重ねていけばほんのりと朱に染まっていった。そんな様がロックオンは嫌だというけれど僕にとってはとても可愛いと秘かに思っているんだ。
順調に杯を重ねロックオンが持ってきたボトルが空になる頃、何故かロックオンはやけに時計を気にするようになった。
「何かあるの?」
と訊ねてみても、
「いや、何でもねぇよ。」
と返されるだけで。でもロックオンは時計を気にすることを止めることはない。僕も何だかそんなロックオンが無性に気になるけれど、でも何でもないと返されてしまっては聞くことも出来なかった。
そうして暫く経った後。
ピピッ、と軽い電子音が鳴って時計が日付が変わったことを教えてくれた。それと同時に、
「HappyBiethday Allelujah」
耳元でそう囁かれて、しかも頬に感じる唇の感触。
慌てて隣に座っていたロックオンの顔に視線を合わせれば、少し恥ずかしそうに、でも優しい笑みを浮かべてロックオンは僕を見つめてくれていた。
「・・・っ!えっ?あ、あの・・・・・・・えぇっ!?」
突然のことに驚いて動揺して口から出る言葉は意味を成さないどころか単語にもなってない。
今日はおまえの誕生日だろ?と言われてやっと気付く。すっかり僕は僕の誕生日を忘れていた。だからロックオンに祝福の言葉を言われて驚いたし、しかも頬にキスまでしてもらって更に驚いた。普段のロックオンからは想像もつかないから。
「そーんなに驚くなよぉ。」
僕の動揺振りにロックオンは思わず苦笑いといった表情。でもそういった後、俯いて消え入りそうな声で聞こえた言葉に僕は頬が緩むのを止める事が出来なかった。
あぁ、だからロックオンはあんなに時計を気にしていたんだね。
俯いてしまったロックオンを見れば、亜麻色の髪から覗く肌は朱色に染まっている。これはきっとアルコールの所為だけではないはずだ。
「・・・・・ありがとう、ロックオン。すごく・・・嬉しいよ。」
この組織に入るまで誕生日というものに特別意味を見出せなかった。『おめでとう』と言われても何の感慨も浮かばなかった。
けれどもロックオンと出逢って、ロックオンから祝福の言葉を貰えるようになって、初めて誕生日が嬉しいものだとわかった。ロックオンが僕が生まれたことを祝福してくれるのだと思うと、嬉しさが何倍にもなる。
堪えきれずにその身体を抱きしめて耳元に唇を寄せれば、ロックオンは擽ったそうに身を捩りながらも腕を僕の背中に廻してくれた。
こんな世界だけれども。こんな明日をも知れない身だけれども。
こうやって大好きな人と抱き合って誕生日を迎えられる僕はとても幸せなんだと思う。だから今度の貴方の誕生日も一番に僕に祝わせて、ね?
2009.02